津島でら寺巡り

津島でら寺巡りと津島のお寺のレポートを発信していきます

帝護山 照蓮坊 ご住職インタビュー ~どんなかたもお迎えできる寺に~

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※2020年3月のでら寺巡り中止により掲載を見合わせたインタビュー記事です。

再開に伴い、ご住職の許可のもと改めて掲載させていただくことになりました。

当時と状況は異なりますことご了承ください。



令和最初の冬、帝護山 照蓮坊(津島市宝町20)を訪ねた。

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全国の都道府県で寺院数ダントツの愛知県、その中でも「寺密度」(寺院数/面積)が最高の津島市だが、浄土真宗 本願寺派の寺院は、こちらの照蓮坊ただ一箇寺。
また、【津島でら寺巡り】所縁のお寺で、唯一の浄土真宗の寺院である。

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今回、照蓮坊をお訪ねしたのは、真宗ならではの話を聴きたいと思ったからだ。
法務で大変お忙しい中、ご住職がお話を聞かせてくださった。

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Q. 照蓮坊様の縁起を教えていただけますか?

ご住職 記録には残っていないんですが、大昔は「照養院(しょうよういん)」という天台宗の寺だったそうです。1400年代後半、浄土真宗の中興の祖と謂われる蓮如上人が全国を行脚したんですね。それで、浄土真宗は爆発的に広がったんです。蓮如様がこちらに来られた時、帰依をして浄土真宗の寺に変わったと伝えられています。その時の住職の名前が、照蓮さんだったそうです。照蓮さんは1473年に亡くなったと記録されていますから、照蓮坊としての開基もその辺りということになりますね。

Q. 蓮如様にも照蓮様にも、「蓮」の字がありますね。

ご住職 (照蓮様が)蓮如様から頂いたんじゃないかと思いますね。記録にも「名付けられた」と書かれていますので。

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Q. 阿弥陀様が御本尊ですよね?

ご住職 はい、阿弥陀様です。浄土真宗のお寺は、全部そうです。

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Q. 御本尊も、旧いものなんですか?

ご住職 本願寺の14代目の住職である寂如(じゃくにょ)上人からの裏書がありまして、1675年という年数が書かれています。

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Q. 以前「津島でら寺巡り」でも紹介させていただきましたが、こちらには親鸞聖人の「御絵伝(ごえでん)」の掛け軸もありましたよね?

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ご住職 「御絵伝」は本願寺にもありまして、大昔、親鸞聖人の曾孫の覚如(かくにょ)上人という本願寺の第3代宗主が書いたものです。「御絵伝」という絵と、「御伝抄(ごでんしょう)」という文章、この二つで親鸞聖人の生涯が、どのように浄土真宗の教えが説かれていくのかが書かれたものです。それを、お寺でも奉懸しているんです。本山で「報恩講」を行う1月に先立って、一般のお寺では11月か12月に「お取り越し」を行うんですけど、うちも毎年12月のお取り越しで御絵伝をお披露目しています。

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Q. でら寺巡りで各寺の御朱印を取り上げていますが、そもそも浄土真宗では御朱印は授与されないんですよね?

ご住職 御朱印とは元々、納経の印しとして寺が発行したものなんですね。お経を書いて納め、お寺が受け取り、その証に御朱印を出す、という流れです。納経には、先ず写経という修行が前提にあるんですね。浄土真宗は、修行によって成仏するという教えではないので、御朱印は無いんです。

Q. その教えというのは、親鸞聖人の教えなんですか?

ご住職 一切の修行を捨てて、唯ただ阿弥陀仏にお任せしなさいというのが、親鸞聖人の教えです。「自分が修行することによって仏になる」という考えは、阿弥陀様の救いから逆行する考え方になってしまうんですね。「任せろ」って言ってるのに「いや、自分でやる」というのは、失礼に当たると言えます。

Q. 修行するという概念が無いので、御朱印も無いと?

ご住職 ただ、一概には言い切れないんですよ。公式には「やらない」とは言うものの、実は戦前やっていたという記録が残っていたりもするんですよね。そんなことも踏まえて本山に尋ねてみたんですが、今は「やりません」という立場を取っています。今でもやっているお寺もあるそうで、そのお寺に聞いてみないと分かりませんが、参拝の印しにお書きしているということではないかと思います。

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Q. 照蓮坊様でも、参拝の記念にお庫裏様が絵を描いてらっしゃいましたよね?

ご住職 妊娠中なのでお休みさせていただいておりましたが、今年1月より再開いたしました。

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Q. あれは御朱印ではないんですよね?

ご住職 はい、「おえかき」と呼んでいます(笑)。始まりは本当にたまたまだったんですけど、でら寺巡りの時に本堂に設けた休憩所に子供さんが集まってきて、そのお相手に遊びで描いてたんですよ。すると周りの大人の方が、「可愛いですね」「私もよかったら描いてください」となりまして。そうしたら、次回のでら寺の時も「かいてくださると聞いたんですが」という方々がいらっしゃるようになって。戸惑いながらやっていたんですが、「これは飽くまで御朱印ではない」ということは、口を酸っぱくしてお伝えしていました(笑)。御朱印ではない以上、御朱印帳に描くのはよくないですし、紆余曲折を経てスケッチブックや色紙を持って来ていただいてお描きしていました。

Q. 「御朱印帳にお願いします!」と言われることも多かったのでは?

ご住職 基本はお断りしています。と言うのも、お寺様によっては「御朱印じゃないものを書いてある御朱印帳には書かない」ということもあると聞いたので。

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Q. お庫裏様は、絵を学ばれたんですか?

お庫裏様 いえいえ(笑)!やってないです、好きだっただけで。物を作ったり、絵を描いたり、そういうことは凄く好きだったんですよ。

Q. ごきょうだい揃って、絵を描かれますもんね。

お庫裏様 そうですね、母も描きますし。母は元々トールペイントで木に絵を描いたりしていたんですけど、それを教えたりもしています。妹は小さい時からずっと絵を描いていたような子で、今は作家として活動しています。

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Q. 色々なご縁もあって、面白いですね。

ご住職 本当に、ご縁なんですよね。私の頭の中には、第一に「開かれたお寺」というのがあるんです。お寺は、お葬式や法事の為だけにある訳ではなく、皆が集う場所として大昔から出来上がっていった場所ではないかと思うんですよね。今、沢山いらっしゃいますがお檀家様だけに留めるのではなく、広く一般の皆様に来ていただくことによって、「浄土真宗って、こんな感じなんだ」「お寺って、こういう所なんだ」「仏様って、こういう人なんだ」と、少しでもお伝えできれば良いと思っております。

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Q. お寺カフェやコンサートも、その一環ですね?

ご住職 そうです。津島って、今ちょっと寂しい町になっていると思います。その中で、津島にある資源を考えた時に、お寺は貴重な資源になると思ったんですね。観光資源でもあるし、色々なことに使えると思うんです。折角こうして人が集える屋根があって場所があるなら、コンサートをやっても良いし、落語をやっても良いし、もっともっと色々な使い方をしていかないと勿体ないと思って。その結果、町の活性化に繋がっていけば一番いいと思います。

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Q. 人も、資源ですもんね。

ご住職 そうですね。

Q. それは、阿弥陀様の教えとも合致しますか?

ご住職 うーん……そうですね(笑)。阿弥陀様って、「お前は頑張ってるから救う。お前は怠惰だから救わない」とか、そういうことはないんですね。「一切の者を救う」という、一切の分け隔てがない仏様なんです。どんな方でも「ようこそお参りになりました」とお迎えできる、そんなお寺になりたい、していきたいと思います。

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※次回の開催は2022年2月27日(日)「津島でら寺巡りと福よせ雛」でのお雛様の展示となる。

ご家族が増え、より賑やかとなったお寺様を、是非訪れていただきたいと思う。